タランチュラ 本編

最終章 /9)平和への願い

「よかった…これでリトマスにも報告できるわ」

「その写真、ヒーリアムですか?懐かしい!」

「そっ、本名リトマスって言うんだけどねー。彼の最後の頼みだったのよ、あの子達を全うな道に導いてくれってね。この私に頼むことか~っていうのよ!」

ブロモチモールは悲しそうに笑った。ヒーリアムこと、リトマスは歯車でブロモチモールと組んでいた幼馴染みの青年。歯車時代に殉職し、それがブロモチモールの歯車脱走のきっかけとなったのはまた別の話で。

「さぁ、レインちゃん!私のお願い聞いてくれてありがとう!なんでもお礼はするわ。ロスメタ王女の護衛の件はいいの?いっくらでも人、派遣するわよー」

気前のよい発言にエーテルが苦笑する。

「さ、さすが民間賞金稼ぎ協会会長……」

「ほほほほほ。なんでもお言いなさい!」

高飛車に返事した。ブロモチモールは歯車脱走後、メチレンたちが所属する民間賞金稼ぎ協会を立ち上げたのだった。

「王女の護衛は不要だ、断られた。

貴様のところのふざけた小娘達にも世話になったし、望むものは何もない」

レインは穏やかに笑った。

「あー、チェシルとマリーテルね。役に立ったのなら良かったわ」

「あぁ」

「じゃあ、これあげる」

ブロモチモールは封筒を差し出した。

「?」

レインが封筒を開ける。

「なんだ、これは?」

怪訝そうな面持ちでブロモチモールを見る。

「謝礼よ、謝礼。あんた休暇中なんでしょー、たまには温泉でも行って体の疲れ取りなさいよー」

「2枚あるぞ」

「旦那と行けば?」

ブロモチモールの言葉にレインが鼻で笑う。

「奴は仕事だ。私とは違って簡単には休めん」

「そうなんだー。隠密も大変なのね」

「奴が上層部で真面目に働いていれば、国の平和は保たれ、私が呼ばれることもなかろう。

もし、私が表舞台に出るような事態に国家を陥れたときは真っ先に首をはねてやるさ」

「わーウィンド、責任重大!」

ブロモチモールは笑った。

「過去の私の罪は国家のためとはいえ、許されるべきものではない。今はすべては慈悲深い前国王の意のまま、この国の平和を願うだけだ」

レインは遠くを見た。

「歯車の生き残り、ほとんどあんたのところで引き取ってくれてるんでしょ、国家賞金稼ぎ協会会長様?」

「ああ、野放しにはできんからな」

「よし!日頃頑張ってるレイン会長に特別サービス!この私が直々に癒しの旅に連れていってやるかー!

会長同士仲良く女温泉旅にいくぞ~!交流会よー」

「待て、私は行くとは言っていないぞ!」

言うが早く、ブロモチモールはレインを引きずって去っていった。

「は、離せ!私は行くとは行っていないぞ!」

「暴れない、暴れない、殺すわよ!あはははは」

「いってらっしゃーい」

嵐が無事去ってくれたことを喜びつつ、エーテルは手を振って見送った。

「できることなら、二人とも二度と来ないで~」

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