タランチュラ 本編

第2章 /1)バドっ球大戦

「やっぱりこれは邪道だよ!!」

 浴衣姿で乾いた赤髪に白い大きなベレー帽をかぶったアンバランスな格好をしている見た感じ13、4歳の少年が文句を言う。
 それを聞き、同じ年のころの金髪が反論する。

「ずるいよ!ルゥが負けたんだからちゃんと約束守ってよ!!」

 2人の手にはバトミントン用のラケットが握られていた。

「だいたい、なんで温泉でバトミントンなの?!しかも浴衣で!
 普通卓球じゃないの?!」

「何言ってんの、バトミントンじゃないよ!ちゃんと卓球の台と球使ってるじゃん!!」

「使ってるからって、こんな珍スポーツは無効だよ!!」

 2人の子どもは今にもラケットを台に叩き付けそうな勢いだ。

「珍スポーツじゃないよ、バドっ球だってば!
 だいたい自分が負けたからって、言い訳はやめてよ!この勝負はルゥの負けなのっ!」

「…認めない。こんな勝負、絶対認めない!」

”バンっ!!”

 とうとうラケットを台に叩きつけた。勢い余ってラケットは後ろの方にぶっ飛んで行った。

「ずるいよ!勝負は勝負!ちゃんと約束は守ってよね!」

 金髪のラケットも台に叩きつけられ、飛んでいってしまった。

”カランカランカラン…”

 2つのラケットが床に転がった。
2人の子どもは威嚇し合っているネコのように睨みあっている。ただの子どものケンカには見えない迫力があった。
 今にも殴りあいになりそうな2人に、気が抜ける穏やかな声がかかった。

「もしかしてメチレンとルゥじゃない?」

 優しい声。少し濡れた長い髪に2人の子どもたちと同じ浴衣を着た20歳前後の女。
 人懐っこそうなその優しい笑顔はつい先日知り合い、別れたばかりの旅人ユサであった。

「2人もここに泊まってたの?」

 ユサと別れて3日。思ったよりも早い再会にお互い少し驚いていた。

「何してたの?盛り上がってみてたみたいだけど」

 ユサはマイペースな笑顔でその場の空気を浄化した。
 2人は斯く斯く云々と事情を説明した。

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