タランチュラ 本編

第3章 /4)狭い世の中



 着替え終わったユサは、鏡の前で長い髪を櫛でといていた。すると、窓の外から小さな声が聞こえた。

『ユサユサユサ』

 それは、聞き覚えのある鳴き声だった。

「ノヴァム!!」

 ユサが窓を開けると、1匹のオウムが部屋に飛び込んできた。慌てている様子だ。
ユサはノヴァムと呼ぶオウムを抱きしめた。

「どこに行ってたの?」

 このオウムはユサが記憶をなくしたときから一緒に旅をしてきた鳥だった。もともと、街や村に入るとふら~っといなくなるが、旅立つときには戻ってきている自由気ままだが、賢い鳥だった。
 今回も、街に入った途端行方を眩ませていたのだ。

「よくここがわかったわね」

 ユサはノヴァムの頭を撫でた。

「ユサ!」

 ノヴァムは急に暴れだし、ユサの手から離れた。

「ユサ、サヨナラ!ユサ、サヨナラ!」

 そういうと、どこか遠くへ飛んでいってしまった。

「え?ノヴァム?!ちょっと待って!どういうこと?どこにいくの?!」

 ユサは窓から身を乗り出し叫んだが、ノヴァムからの返事は返って来なかった。

「ノヴァム…」

 ユサはノヴァムが飛び去った方角をじっと見つめた。



0
  • しおりをはさむ
  • 9
  • 0
/ 151ページ
このページを編集する