タランチュラ 本編

第1章 /2)きっかけは突然



 森の一本道。それはこの山を越える唯一の通り道である。
 土固めの舗装された硬い地は乗り物にも徒歩にも親切な道であった。
 その道のど真ん中に非常識にも1枚敷物が広がっている。
 幸い、人通りがないため迷惑にはなってないが、邪魔には違いない。

「ルゥ~!ピヨ子連れてきたよぉ~」
『コゲェー!!』

 そんな敷物の方に向って手を大きく振りながらメチレンが走ってきた。
 その後ろには必死について来たピヨ子の姿がある。

「おかえり。ご飯にしようか?」

 メチレンの声を聞き、その敷物に座っているルゥと呼ばれた者が振り返る。
 メチレンと同じ位の背格好で純白のベレー帽を赤髪の上からかぶり、動きやすそうな生地のジャケットを羽織っていた。深紅の瞳が笑いかける。
 名はメチル・オレンジ。メチレンの相棒だった。
 敷物の上に並べられた重箱のような弁当箱を見て、メチレンが目を輝かせる。それに続いてピヨ子が鳴く。

「わぁぁぁぁ~!!」
『コゲェ~~~!!』

「今朝、旅館の女将さんが作ってくれたんだよ」

 ルゥは弁当箱の蓋を開ける。蓋の下から現れた色鮮やかなおかずは食欲を大いに煽っていた。
 メチレンは急いで使い込んだ白をベースとしたスニーカーを脱ぎ捨て、敷物に座る。ピヨ子も急いで後に続く。もちろん土足で。

「早く食べようよ!お腹ペコペコだよぉ~」
『コゲぇ~』

 メチレンとピヨ子はお腹に手を当てて、空腹さをアピールする。メチレンのお腹はグゥグゥ鳴っていた。

「手は洗ってきた?」

「………」
『………』

 突然のルゥの質問にメチレンとピヨ子は顔を見合わせ、黙った。

「何のために川の方に行ってきたの?」

「…お散歩?」
『…コゲ?』

「違うだろ~、水汲みをしにいったんだろ~」

「いちちちち~ごべんなはい~」
『コゲげげげげ~』

 ルゥに頬をつねられたメチレンと短い鶏冠を引っ張られたピヨ子はすまなさそうに謝る。

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