タランチュラ 本編

第4章 /3)彼女の正体



“バサバサバサ”

『クルックルー』

 鳥の羽ばたく音と鳴き声が聞こえた。

「おかえり。ご苦労さま」

 ポニーテールの20歳過ぎの細身の女、エーテルは窓を開け、優しい顔で歓迎した。窓の外に止まった純白の鳩がエーテルの指の上に止まる。

 真夜中の12時。

「鳥、帰って来たの?」

 リビングのソファーで仮眠をとっていた客人が目を覚ます。寝起きの重たい瞼を擦りながら、小柄な少女、リンがソファーからからだを起こした。

「何て?」

 横にいた男、ニッカルが尋ねる。
 エーテルと鳩は言葉を交わすと、エーテルは眉をひそめた。

「……連中が街の西にいるのは確かみたい。場所は、昔、あなたたち『ラビット』が爆破した監獄」

 『ラビット』の2人が少し考え込む。そして同時に手を打った。

“ポン”

「あぁ、あれか」

 エーテルは偵察から帰ってきた鳩にお礼を言うと、鳥かごに戻した。

「リンはあのレニウムと鳩の会話、わかる?」

「分かるわけがない」

「さすが鳥使いのレニウムだよねー」

 ニッカルは1人で感心していた。
 『レニウム』とは、前国王時代に存在した殺し屋組織『歯車』に所属していたときのエーテルの名前である。その頃からの知り合いで、同じように『歯車』に所属していたニッカルとリンは、その名で彼女を呼び続けた。

「鳥、なんて言ってるの?」

「あそこの地下牢に今、2人閉じ込められているみたい」

「誰が?まさか、『蜘蛛』なんて言わないよね?そんな間抜けなことするわけないよねー、ははは」

 『蜘蛛』とは、『歯車』で最強の殺し屋と謳われた2人組『タランチュラ』の別称であった。
 冗談を言って1人で笑うニッカルにエーテルは気まずい顔をした。

「1人はロスメタっていう賞金稼ぎ」

「ロスメタ…?」

 ニッカルの表情が固まる。2、3秒黙った後、大声を出した。

「あ、ロスメタだ!」

「何?」

「うるさい」

 ニッカルの声に驚くエーテルと不快な表情をするリン。

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