タランチュラ 本編

第4章 /5)歯車へようこそ



 俺たちは小さな村で育った。本当に本当に小さな村だった。

 当時、子どもは俺たち2人だけで、過保護なくらい村のみんなにかわいがられた。

 平凡な生活だったけど、俺たちはその生活が大好きだった。そして、俺は子どもながらにあいつのことが本気で大好きだった。

 あの頃が、俺たちの人生で最後の幸せだったのかもしれない。

 俺たちが5つのとき…あの幸せは終わった。

 『隠密部隊』が村にやってきた。黒スーツの男が数人と銀髪の女が1人。

 幼い曖昧な俺の記憶…でも、これだけは嫌でも忘れられなかった。

 村のみんなは、奴らがこの村にやってくることを知っていたかのように、数日前からピリピリしていた。

 奴らが来た時、村の大人全員で奴らと言い争っていた。

「もうお前たちの好きにはさせない!」

「あの子たちを渡すもんか!!」

 いつも優しい村のみんなが大声で怒鳴っていた。

「それは、義務の放棄だ…」

 奴らの中で一番前に立っていた銀髪の女がしゃべった。背筋が凍りそうなほど怖かった。

「あなたたちは隠れてなさい!
 この子たちを頼むわよ」

 大人たちが奴らと言い争っている間、俺の母さんは俺をあいつの母さんに託し、あいつの母さんに手をひかれ、3人で暗い地下室に隠れた。

「何があってもここから出ちゃ駄目よ」

「ママ、みんなは?誰なの、あの人たち?」

「みんな大丈夫。とっても頼もしい人たちだから、悪い人たちをやっつけてくれるわ」

 あいつの母さんはにっこり笑い、俺とあいつの頭を優しくなでてくれた。

 あいつの母さんは目にいっぱい涙をためて、俺の手を握った。とても温かかった。

「この子泣き虫だから、何かあったら助けてあげてね」

 微笑んだ。あいつと同じ顔だった。
そして、あいつを強く抱きしめた。

「何があっても、2人で強く生きなさい」

 あいつの母さんの涙がこぼれた。その時、あいつの母さんの涙と言葉の意味がわからなかった。

 そして、あいつの母さんは俺たちを置いて地下室を出て行った。

 長い時間、俺たちは地下室で小さくうずくまり隠れていた。

 どれくらい時間が経っただろうか…。俺とあいつはいつの間にか眠っていた。

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