タランチュラ番外編 ラビット物語

第一章

高い木々がそびえる林の中。人が通れるくらいの細い道は舗装もされておらず、人気はない。

鳥のさえずりが愛らしく聞こえ、風が穏やかに吹いて木々を優しく揺らす。そんな心地よい自然に、異音が響いた。

「手配ナンバーS.2789、ラビットー!

あんたたちがここにいるのはわかってるのー!

速やかにー、投降しなさーい!」

外見、短い金髪のまだ幼さが残る少女・メチレンが、町で借りて来た客呼び込み用のスピーカーで叫ぶ。

かなりのボリュームだったので、木々が大きく揺れた。

一歩間違えば超音波である。

「あんたたちはぁ~、あたしのアイスとケーキになるのー!

だからー、さっさと出て来なさーい!ちょっとー、聞いてんのー!」

仁王立ちで叫び続けるメチレン。

パーン

突如聞こえた銃声。

ほぼ同時にメチレンが口に当てていたスピーカーが爆発した。

ネジやらなにやら部品が地に落ち、スピーカーはバラバラになった。

「あらら」と軽くため息をついた。

スピーカーを持っていた手は軽い火傷になっていて、赤くなっている。

メチレンはその手を少し見つめると、ほこりを払うように手と手を叩いた。

そして、「あれ、借り物だったんだけどなぁ~」と小さくぼやいた。

「まっ、いっか。私のじゃないし」

そう言うと、メチレンは華奢な背中に吊ってある大剣を鞘をつけたまま手にした。

「わざわざ居場所を教えてくれてありがとう」

持ち主の背丈ほどある剣は見るからに重そうで、大男が使ってそうな代物だった。

しかし、メチレンはそれを片手で軽々と構える。

「いっくよー!」

と、元気よく大声を上げた。その声の大きさは、スピーカーを使ったときより、はるかに大きかった。

そして、メチレンは背を低く腰をかがめ、一直線に駆け出した。

相手は姿を見せていない。だが、メチレンはまっすぐ走った。

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