タランチュラ番外編 ラビット物語

第二章 /歯車 らびっとお仕事中



元は白かったであろう薄汚れた壁。

チカチカ目障りな切れかけた蛍光灯が並ぶ窓ひとつない長い長い廊下の先には無数の扉がある。どの扉も同じ材質で同じ色。異なることはドアに書かれた数字のみ。

薄い壁の防音効果は皆無で中からの音も外からの音も防ぐことはできなかった。

ここは建物の地下に作られた「歯車」という組織のためのもの。「歯車」のメンバー達が住んでいた。

「歯車」のメンバーはすべてこどもであった。そのほとんどが国家の敵となるものを排除するために殺人兵器として育てられた。

そのこどもたちは、はじめは孤児を対象に集められたが、孤児では賄いきれない実情に、売買、誘拐、契約など様々な方法で集められた。
そのこどもたちには、初めは「訓練部隊」という最下層で命懸けで殺人のための英才教育がなされた。

まれに用心棒や奴隷で金持ちに引き取られる者もいたが、認められたほとんどが中間層にある「精鋭部隊」という定員118人59組に属していた。男女でペアを組み、その割り振りは能力、性格、相性など総合的に判断され、「隠密部隊」が決める。

「精鋭部隊」には殺人、暗殺、戦争、拉致など、極秘の仕事が与えられる。与えられた仕事はペアで動く。大きな戦争になると複数組の子どもたちが派遣された。

どの仕事についても共通したことは失敗は許されないということ。失敗すれば、命に関わるきついお仕置きが待っており、信用も失墜する。身体的、精神的、社会的死がそこにはあった。

また、今後の任務に影響を来すような怪我や病気、そして命をおとしたときには容易に次の補充が入り、ごみのように捨てられる。

ペアの片方もしくは両方が殺し屋として使えなくなると、「訓練部隊」から補充が入り、新しいペアの再編成がされる。

「歯車」の子どもたちは使い捨て商品であった。その中で子どもたちはたくましく生きた。

「歯車」を取り仕切っていたのは「隠密部隊」という大人の組織。

「隠密部隊」はその名の通り、隠密に動いており、表の世界では知られず、裏では国家自体も操る巨大な力を持つ組織であった。

「隠密部隊」は「歯車」のこどもたちを統括するのも仕事のひとつであり、「歯車」に仕事を与え、監視する立場でもあった。

こどもたちは「隠密部隊」を嫌っていたが、逆らわなかった。幼い頃より行われた教育がそれを可能にした。

そして今日も子どもたちは与えられた仕事を遂行した。

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