タランチュラ番外編 ラビット物語

第二章 /現在 クモとウサギ



「で、『歯車』でたあと、国家やってたんでしょ?なんでクビになったの?」

メチレンが尋ねる。

ここはさきほどの喫茶店。縄を解放された子どもたちはこの村でのそれぞれの役割に戻り、メチレンたちとラビットの二人は喫茶店の若きマスター・タールのいれた紅茶を囲んでいた。

「詳しいねぇ」

マグが紅茶をすする。

「私もさっきまで知らなかったけど、賞金首になってるじゃん。それくらいの情報は出てたよ」

メチレンはライセンスにラビットの情報欄を表示させて見せると、マグは驚いたり、困ったそぶりを見せることなく表情が明るくなる。

「へーホントだ。これ見て、賞金稼ぎがじゃんじゃん来てくれたら大儲けできるね」

コクり。リンが頷く。

「え、意味わかんなーい。マグはともかく、リンまでこの村で何やってんの?
他人に無関心のリンが子ども相手してるのかウケるんだけど」

小バカにするメチレンに苛立つところか微笑む。

「話せば長くなるんだけど、俺たち、国家賞金稼ぎの仕事でこの村に来たのがきっかけなんだ。
調査でこの村の実情を知った。この村には大人がいない」

「それは気づいたよ。なんでなの?」

また出してもらったアイスを食べながらメチレンが聞く。

「それは言えない。言いたくない」

マグは細くいつもニコニコ笑っているような目をチラリと見開き、威嚇する。

「だから、俺たちは本部に調査報告をしなかった。国家は仕事に期限があるからね。それを無断でやぶったから資格を剥奪されたんだ」

ニコニコ。いつもの穏やかな表情に戻るマグ。
資格を剥奪され、賞金首になったことには後悔はないようだ。

「今は子どもたちとこの村に来た旅人の荷を子どもたちと結託して泥棒してなんとか金目のものは調達して、あとは自給自足ののんびり生活さ」

「そんなに旅人が来る場所だとは思えないけど。私たちも来たの、本当にたまたまだよ?」

「そうなんだよ、久しぶりの金づるだったのに、それが君たちだなんて…。しかも、金を奪うどころか、捕まっちゃうし、逆にアイスを奢らされるし…」

さっき食べたアイス代と今の飲食代はラビット持ちだ。

「にゃははははー。いいじゃん、見逃してあげるんだから」

テーブル越しにバンバンッ!とメチレンはマグの肩を叩いた。

「それを言われると言い返せないけど、ほどほどにしてくれよ」

マグは苦笑した。

「ところで、なんで君たちはそんな格好なの?」

メチレンとメチルの格好の事だろう。二人に女装、男装の趣味があったとは初耳だ。

「あー、これ?かわいいでしょ?」

メチレンは座ったまま、むき出しの肩でクネッとポーズをとり、色気のアピールをするが、お色気0点。男と知っているから、むしろ気分不快を招く。リンは相変わらず無言だ。

「なんか、反応ムカつくんだけどー…パクパクパク」

溶けかけのアイスを早口で口に運び、飲み込んだ。

「私らもお尋ね者だからね、一応変装だよ」
「変装…なるほどね」

よく見れば顔は昔の面影を残すが、性別が違い、髪型も変わっている。すぐには彼らがタランチュラには結び付かない…かもしれない。
マグは納得した。

「サンの…その勇ましい感じは…演技…なのかな?」

言いにくそくに言うマグ。
さっきメチレンをぶっとばしたシーンが衝撃的すぎたようだ。昔の言葉も出なかった控えめなおとなしい彼女とは似つかない。さっきから言葉を発していないが、それは昔の名残で違和感はない。ただ、ものすごい不機嫌な顔をしているのが分かる。

目線の先には見た目の幼さには見合わない豊満な胸をメチレンの腕に押し付けて、腕をつかんで離さないリンの姿がある。

「………フ」

リンがメチルの視線に気づき、鼻で笑う。

むっかぁぁあーーーっ!

メチルの顔が真っ赤になる。

「二人ってこんな感じだっけ?」
「わかんなーい」

メチレンはリンを引き剥がそうとしたが、リンは強く細い腕でメチレンにしがみつき、離れなかった。

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