タランチュラ番外編 ラビット物語

第三章 /総総



モゾモゾ

しぶしぶ服を着るリン。臍出しビスチェにシースルーのトップス。下着姿と言っても代わり映えがしない衣装だが、裸より全然マシだ。

「…着た」

無口の癖にわざわざ報告をくれ、やっとメチレンも安心してリンを見れる。

「はいはい、よくできました」

ナデナデ

メチレンより小柄な少女。年下の相手をするように接すると、上目遣いで睨んできたが、知らんぷりしておいた。

「あー朝から動いたからお腹すいた~。リンは朝ごはん、食べたの?」

メチレンは荷物の中を漁りながら尋ねた。リンは首を横に降る。

「そうだよねー、夜這い…じゃなくて、朝這いに来てたんだもんねー食べる暇ないよねー」

嫌味を言いながら荷物の中から着替えを取り出し、あと食べ物を探すがない。

「あ、そうだ!昨日、ピヨ子が食べちゃったんだ…」

昨日の怒りがフツフツよみがえる。サブの荷物も漁ってみた。

「おおおー!発見ーっ!」

スティック状のソフトクッキー。これ一本でなかなかのカロリーが摂取できる優れもの。腹持ちもまぁまぁ良いが、満腹感と満足感は期待できない旅の定番非常食。

勝手に非常食に手を出すとメチルに怒られそうだが、お腹がすいたメチレンには今が非常事態だ。今食べなくていつ食べる!

ポキンッ

メチレンはソフトクッキーを半分に折り、リンに差し出す。

「あげる」

勢いで受けとるリン。じーっとソフトクッキーを見つめる。

「パサパサするけど、味は悪くないよ」

一気に食べたメチレンがリンに言う。だからと言って、何本も食べたいものでもない。なぜなら、口の中の水分がすべて持っていかれるから。
多少満たる腹と引き換えに、耐え難い口渇感。瀬に腹は代えられないまさに非常食だ。
ゴクゴクと水分を取り、満足するメチレン。

リンはまだ手をつけていない。

そういえば、リンは少食すぎることを思い出した。

「食べないの?」

せっかくあげたのに…という気持ちもあるが、無理矢理食べさせるとリンは吐くことを思い出し、無理強いはしない。

「…持って帰る」

ハンカチを取り出し、ソフトクッキーを包む。 

「子どもたち、食べる」

おみやげにしたいみたいだ。メチレンは不器用なリンがみせる優しさに思わずクスリと笑った。

「あれ?リン、顔色悪くない?」

「…悪くない」

リンは言い切る。リンはメチルと違って化粧しているので分かりにくかったが、よく見ると顔が青白い。もともと色白なリン。久しぶりに会ったからそう思うのだろうか。

「リン、ちゃんと食べてる?」
「…食べてる」

「しんどくないの?」
「…しんどくない」

「本当?」
「…本当」

「本当に本当?」
「…本当に本当」

「本当に本当に本当?」
「…しつこい」

キッと睨み付けてくるリンにメチレンは首をかしげながらも、本人が大丈夫というのなら、まぁいいかと深くは追求しなかった。

「無理しちゃダメだよ」

ナデナデ
ペシッ

子どものように扱ってくるメチレンの手をリンは乱暴に払い、睨む目線がドアの方に移る。

「………来る」

ただならぬ雰囲気のリンにメチレンが戸惑う。

「え、なになに?何が来るの?」

バンっ!

勢いよく扉が開き、それと同時に何か白いものが飛び込んだ。
目にも止まらぬ速さで目の前を通りすぎ、折り返し突っ込んでくるそれは、一瞬ボールかと思ったが、よく見ると白い総総とした毛むくじゃら。

「ガルルルルー」

謎の鳴き声をあげながら突進してくるそれをメチレンはヒョイっとかわす。リンの拳銃を避けるほどの動体視力の持ち主。得たいの知れない謎の生き物くらい避けるのは朝飯前。

ピュンピュンピュンッ!

ジグザグしながら飛びかかるそれ。

ガシッ!

メチレンが両手で掴み取った。

0
  • しおりをはさむ
  • 0
  • 0
/ 38ページ
このページを編集する