タランチュラ タラレッドその後

第一章 /連行

馬車の中。山道を走るそれはお世辞にも良い作りとは言えず、ガタガタ大きな音を立てながら激しく揺れる。揺れる度に壁や天井、固い木の作りの椅子のどこかに頭やお尻をうちつけ、落ち着かない。

ゴンっ

また大きな音がした。

「ねえっ!このおんぼろ馬車、どうにかならないの?狭いしっ!これこそ拷問だわっ」

ブロモが頭を押さえて怒る。これなら歩いた方がまだましだ。
ただでさえ今から待ち受けているのは、こわーいお姉さんに怒られるイベントだ。気分も滅入る。

「狭いのはブロモチモールさんが場所取りすぎだからです」

テルミットが怒ったように言うがこわくない。
ブロモは横柄に窓枠に肘をつき、足を組んで一人で二人分のスペースを陣取っている。
ブロモは全然狭くない。狭いのは追いやられている他のメンバーだが、あえて口応えはしない。一言言い返すと、百の文句で返ってくるからだ。

「フンっ」

ブロモはそっぽを向く。
テルミットは苦手だ。いじめてもニコニコ笑って優しい雰囲気をかもしだしてくる。調子が狂うからあまり近づきたくないのだ。

「はあー」

何度目だろう。深いふかーいため息。それは馬車の中の空気をすべて重たい陰湿な空気に変える。虚ろな憂鬱な目。この場にいるだけで疲れてしまう。

「もうっブロモ!そのため息やめなさいよ!」

トーリアムが怒る。皆が思ったことだが、やっと言えた。

「………」

チラッとトーリアムを見るブロモ。

「はあー」

ため息で反発。

「楽しいこと、考えましょうよ!」

ブロモの憂鬱がわからないトーリアムではない。だが、この雰囲気は耐えられない。これこそ拷問だ。

「楽しいこと?」

ブロモが食いついた。

「そうよ、楽しいことっ!例えばぁー…」

トーリアムは楽しそうに人差し指を立てて、ここでできる気分転換を考えようとすると、ブロモがそれに被せて言う。

「例えばぁー…」

ブロモが手をヌッと伸ばすと、トーリアムの人差し指をギュッと掴んだ。

「トーリアムにどんな嫌がらせをするか考えるとかどう?」
「…賛成」

ポキンッ

勢いよくトーリアムの白い指が本来曲がらない方向に曲がる。

「………ギャァァアアアアっ!!」

トーリアムの表情が一瞬かたまり、悲鳴に変わった。

「きゃー!トーリアムちゃん、指おかしいよ!変変変っ!」 
「きゃー!痛そう!」

パニックになるエチレンとテルミット。

「あんた、バッカじゃないの!?」

トーリアムが叫ぶが、ブロモは知らんぷり。またつまらなそうに窓の外をため息をつきながら見た。

なんもと生々しい指の異様な曲がり方と悲鳴に青ざめるレッド。
それをニヤリと見るアメリーシアム。至極楽しそうだ。
トーリアムは自力で目に涙を浮かべながら曲がった指を矯正し、治療する。キレイに指は治って痛みが癒えても、痛かった記憶は忘れない。
トーリアムはキッとブロモを睨み付けた。

「ブロモがこの後どうなるでしょうクイズっ!」

精一杯の嫌がらせ返しを考えてみた。なんとも幼稚な発想だが、とにかくブロモに仕返しができるならなんでもよかった。

誰も回答者がいないのは分かりきっていること。
トーリアムはピンっと手をあげた。

「はいっ!すんごく痛い拷問されるの!指がボキボキに折られたって治してあげないんだからねっ!」

べーと舌を出すトーリアム。

ブロモはトーリアムの顔を一瞥すると、ハンッと鼻で笑い、顎をクイッとトーリアムに向けて動かした。

するとアメリーシアムがスッと立ち上がり、無言無表情でトーリアムの頬を吊り上げた。

「痛い痛い痛いいたぁーーいっ!!」

何事もなかったように着席するアメリーシアム。頬を真っ赤に染め腫らしたトーリアムは頬を擦る。もう何も言うまいと心に決めた。

「でも、私も気になるな~。ブロモちゃん、帰ったらそのままレインちゃんのところにいっちゃうの?」

エチレンが聞く。エチレンはブロモの身を案じているのではない。むしろ、ブロモが不在の間、もしくは極刑を与えられた場合、今後の身の振り方を心配している。意外とドライなのだ。
それにはテルミットが答える。

「ええ、そのままうちの本部に連行することになるわ」

逃がさないぞっと笑みを向けるテルミット。

「あの人も待ってるしね!」

「わー超こわっ!」

エチレンが震え上がる。直接関わることはほとんどないが、民間賞金稼ぎ協会に来たときに放つ威圧感は知っている。ただ普通に歩いてるだけなのに、ビビってしまうオーラと目付きの悪さ。

「そう?とってもかわいい人よ?」

テルミットが微笑んだ。

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