タランチュラ タラレッドその後

第二章 /(回想編)歯車




『歯車』の精鋭部隊は男女ペアでひとつのユニット。相手は相性をみて『隠密』が決める。『歯車』は、『隠密』が作った『隠密』が管理する戦う道具、奴隷だった。

その構成は拾ってきた子どもたち。
『歯車』のなかでも、それを育てられている間は『訓練部隊』。名前は割り振られた番号。自由などない訓練ばかりの日々だった。育てあげてあげられると『精鋭部隊』に昇進する。名前が与えられ、少しだけ自由が与えられるが『隠密』の奴隷であることには変わりない。

『歯車』に連れてこられたのが五歳のとき。私の村は子どもは五歳になると『歯車』に出荷されていたようだ。それを知ったのは自分が出荷されたときだった。

それから何年か経った。名前は数字の時代を経て、今はリティアムという名だ。戦う道具として育てられた私たち。
食事は与えられる。衣服も与えられる。寝床も与えられる。衣食住を揃えてもらっても、私たち道具には人権はなかった。

任務での失敗は重い体罰。仲間同士のいざこざは命懸け。親(『隠密部隊』)の言うことは絶対服従。言いつけは守るように訓練し、育てられた。その命令が任務とは全く関係ない親のストレスの捌け口であっても。

私は目付きが気にくわないとよく殴られ、黙って従っていた。それが一番痛くないから。そして、早く終わるから。
腐ったところだった。女は親や仲間からのストレスの捌け口として最適だった。女は力では男に勝てない。その常識がここでの女の立場をさらに悪くした。

「リティっ!どうしたの、その怪我!?」

赤髪赤目の少年が駆け寄ってきた。彼の当時の名はヒーリアム。幼馴染みのリトマスだった。
後に私のパートナーとなる彼は、今はまだ別のユニット。
昔から私のことを気にかけてくれていた。
優しい顔立ちの彼は見た目のまま優しい。ただ、強そうに見えなかいが、実際はその通り、強くない。
ボロボロの服に殴られアザをたくさん作った私を見て驚いている。

「どうしてまたこんな怪我を?今日は非番でしょ?」
「うるさいわねー放っておいて。ヒールには関係ない」

心配して手を差し出すヒールの手を払った。

ヒールはなにも知らない。彼は強くないが、頭は回る。立ち振舞いがうまく、無意識に敵を作らない。
でも私はそんなにうまくやれない。女の世界は怖い。女のいじめや嫉妬は陰湿だ。そして男は女を見下す。ここには私の味方はいない。

唯一、優しく手をさし伸ばしてくれるのはリトマスだけ。でも、彼をこちらにひきこんではいけない。私は彼と距離を取っていた。

苛立ちを足音に表してカツカツ音をたてて自室のベッドに転がった。硬いベッドに突っ伏し、シーツをグシャッと掴んだ。

「いつか見ていろ、絶対殺してやる…」

私は溢れる涙を枕に吸わせた。

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