私はまた飛び降りる【完】

前世 /想い





──────あれから、一ヶ月が経った。





私と冬季さんはあれから何度も同じ時を共有して、よく街へ遊びにいった。

流行りだという活動写真。初めて見るチャップリン。



日本がこうも変わっていくというのに、私の心は変化のひとつもない。

異国の文化を取り入れ、良い方か悪い方にか成長していく日本に住んでいるのに。

私はまだ過去に取り残されたまま、隣にいる人を愛せないでいる。


そんな自分にある意味失望しながらも、葵さんを愛し続けている自分に安堵したりもする。

矛盾だらけの自分の心にまた戸惑った。



葵さんとはあれ以来会ってない。

病が移るというらしいが私は別に移っても構わない。

彼と同じ病を共有出来たら、それもまた幸せだと思うだろう。



彼と全てを分かち合いと思うのは、私の我儘だろうか。




「桜さん」



そう呼んでくれる冬季さん。

でも本当に呼んでほしいのは彼ではなく葵さん。








そして葵さんは──────もうすぐ死ぬ。

0
  • しおりをはさむ
  • 187
  • 31216
/ 370ページ
このページを編集する