私はまた飛び降りる【完】

前世 /約束



葵さんがいたのは山内家から離れた、別荘だった。



別荘……でもその名が与える印象よりも遥かに小さな建物。

そして驚いたのは、私の屋敷とそれほど離れていない、頑張れば歩いて行ける距離にあった。


冷たい潮風が気持ちの良い、けれどどこか寂しげな場所に佇む和風の別荘。

冬季さんは私に、鼻と口を覆うように、と言うと戸をゆっくりと開けて私を招き入れた。



綺麗に掃除されて清潔な別荘に、侍女がひとりだけ。




「兄さんは?」

「葵様ならいつもの寝室で寝ています」




丁寧に会釈しながら彼女が答える。

冬季さんは彼女に礼を言うと、私を連れて奥に部屋へ進んだ。




進む度に軋む木製の床と、妙に薄暗い廊下。

気が滅入りそうな雰囲気のこの場所に、葵さんがいると思うとなんだか悲しくなった。



部屋の前に着くと、冬季さんは襖の向こうにいるであろう葵さんに声をかけた。




「兄さん、起きてる?」

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