生贄のイヴ姫【完】

棘の檻 /契約者の死神






死神は常に多忙だった。





無数の人類が寿命、事故、病、殺人によって魂を失うその瞬間を見届け、手離された魂を神に送り返す仕事。

数千年同じくことを続け、それこそ星の数ほどの死をそのアメジストに刻んできた。


何度も何度も何度も何度も何度も。


人間の死を見て、魂を送り、そして新しい死へ向かう。



休息も与えられない過酷で永遠に続く仕事を、崇拝する主なる神の為にただこなす日々。



断末魔に耳を塞ぐことに飽き。

未練に溢れる死に顔を無感情に見下ろし。

強烈な血の香りが分からなくなるほど鼻が慣れ。



人間として生きてきた過去さえも、忘却の渦に巻き込まれ、その事実さえも夢に出なくなった頃。



ファイは既に感情を捨て、ただ無気力に魂を送り続けていた。




時間の流れから外され、自分の姿を見える者など主なる神以外にいない。

自分の存在を見失いそうになりながら、ただ仕事に従順に、無言で死を与えていた。

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