冷たい獣【完】

07

「はい」


聞こえたのか、聞こえないのか。返事はなかった。




敬語を使う学さんに、あの人の命令だからなのか、それとも気まずいからなのか、確認出来ずに。


さっき揺れ動く車を見た衝撃は、まだ心の中に収まりきれずにいた。




"ガクが俺の女と寝るのは、これが初めてじゃねーから"


…どうしてなの?


問い掛けたい。けれど、敷物の辺りに散らばっている私の服や下着を見て、学さんはどう思ったかな。


"鏡花さん、あなたはこれから大事にされますよ"


学さんが言ってくれた言葉。…私は、何か間違ってしまったのかな。



シーツに顔を埋めていると、カタン、と扉から音がした。


そのままズルズルと擦るような音が聞こえる。

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