冷たい獣【完】

09

空をつかんでいた手で、スーツにしがみつく。


すると、また仮面の顔に戻った。


…好きな、笑顔だったのに。



「鏡花」


さっきまで体に纏いついていた寒さが嘘みたい。


助手席の前で、一瞬だけ強く引き寄せられ、離れていく体。



「何が食べたい?」


走り出した車の中で、流れていく空と雲を見上げていた。


真っ直ぐな道はずっと続く。


「…パン」


答えた後、どれぐらい車で走っただろう。5分は経っただろうか。

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