出会い系サイトの彼女。【完】

監禁 /戻らないもの。 side 由香



「ゆ――かちゃん!」



机に突っ伏していた顔をあげると、広尾くんの人懐っこい笑顔があたしを迎えた。



ネイルの専門学校、夜間部。

広尾くんは当然のように、あたしの座る席の隣に座った。


「課題、やってきた?」


広尾 智明くんはクラスメイトだった。年齢は前にハタチだと言っていたから、5つも歳が離れている。

目はたれ目で、犬みたいな顔。

身長は170くらい、体は細身。長めの髪の毛は柔らかそうで、いつもふわふわしていた。


「……ううん」


視線を机に落としたまま答える。

正直、今は話しかけてほしくなかった。

広尾くんの視線を感じる。

一体、どうしたんだろうと、訝しんでいる様子だ。



「……もしかして、この間話してくれたことと関係ある?」


「………ん」



曖昧に答えた瞬間、今日の昼間、玄関を開けたときのことを思い出した。

偶然、隣の部屋の人が自転車を止めているところだった。


目があった。


別に、なにか言われたわけじゃない。

たった数秒間、目があっただけ。

それでも、心臓がはち切れるかと思うほど緊張した。

バッグを握るあたしの関節は、きつく握りしめすぎて真っ白になっていた。

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