出会い系サイトの彼女。【完】

加害者 /過去

「……なつき、あの」


なんとか食事を済ませ、立ち上がったなつきに声をかけると、語尾が震えた。

……この感じ、二週間前と同じだな。

最近は当たり前のように言えていた言葉が、なかなか出てこない。


「なあに?」

「……あの、パソコン、使っても……」


なんとなく後ろめたくて、視線を落としたまま聞いてしまった。

折り畳み式の白いテーブルの隅。塗料がはがれて、茶色い点のようになっている場所を、ただ見つめる。


「朝も使ったのに?」

俺は、怒られた子供のように頷いた。

そうだ。

朝も使った。

由香のメールボックスを確認して、返信がないことに少しがっかりして、『ずっと待ってるよ』なんて女々しいメールを送って―――そうか。

由香も、父親がいないのか。

……かわいそうに。


「じゃあ、なつき、洗いものと掃除するからー。それまで使っていいよ♪」


なつきは楽しそうに「よーいどん!」と言うが早いか、台所に消えて行った。


俺は、のそのそと歩いてパソコンの電源を入れる。

いやに気分が重かった。


手慣れた操作で、まずはワードを呼び出す。

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