出会い系サイトの彼女。【完】

行方 /解体

風呂場のタイルに広尾を仰向けにすると、長さが足りなかった。



膝を少し立てて、斜めに寝かせる。

入り口に戻ろうとして、だめだと分かっていたのに、ついふりかえってしまった。


血止めのため――頭にタオルを巻いた広尾が、鬼のような形相で俺を見ていた。

夢と現実の境界が、ふいに曖昧になる。

広尾の血だらけの口から言葉がゴポゴポとあふれて俺を絡めとった。


おい、ふざけんじゃねえぞ。てめえ。俺になにすきる気だよ。コラ、お?なんんだよその目。まじお前俺のこと解には体するつええもり?は無理でそうきねえだろの。ぶるってんだけでだって正直あおに言えよ。ほらおにま


その空洞の瞳に吸い込まれそうになった瞬間、広尾の顔にばさっとタオルがかけられた。



「裕。にらめっこしてる暇はないよ――」


はっとして振り返ると、なつきが大きな裁ちばさみを手に、口をとがらせていた。

俺と入れ替わりに風呂場に足を踏み入れたなつきは、広尾のポケットに手を突っ込み、中のものをポイポイと風呂場の入り口に投げ入れていく。

小銭。

クロコ革の財布。

グッチの定期入れ。

ミニーマウスのキーホルダーがついた鍵が、俺の太ももにぴしっと当たって、タイルの上に落ちる。



「裕、お金欲しい?」


なつきが振り返った。

俺が首を振ると、なつきはさほど興味なさそうに

「そっか。とりあえずお金抜いて、全部ビニール袋に入れてもらっていい?」と言う。

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