嘘つきな君 【完】

第2章 /旅立ち



『ちゃんと最後に日本食食べた?』

「バッチリ。お寿司食べたよ」

『あっち行って、あんまりジャンキーなものばっかり食べたら太るわよ』

「ハンバーガーは週に一回にするよ」



クスクスと笑いながら、電話の向こうの仁美と話す。

本当は見送りに来たいと言っていたけど、どうしても仕事が抜けられなかったみたい。

不貞腐された顔の仁美が簡単に想像できて、なんだか笑えた。



「じゃ、行ってくるね」

『着いたら連絡しなさいよ』

「うん」

『いってらっしゃい。しっかりね』

「ありがとう」



ピッと電話を切って、小さく溜息を吐く。

なんだか、少し寂しかったから。


それでも、それらを振り切る様に荷物を手に空港の中を闊歩する。

まだ朝方という事もあって、人の姿はまばらだ。



「あと、1時間か……」



腕時計に目を落として、呟く。

長年住んだ日本とも、しばらくお別れ。

次は、いつ帰ってこれるか分からない。



「せっかくだから、最後にお茶漬けでも食べとこうかなぁ~」



お寿司で食べ収め! と思っていたけど、やっぱりお茶漬けも食べたくなった。

朝からどんだけ食べるんだよ、と思いながらも、暫く食べられないかと思うと、せっかくだからと思ってしまう。

よし。と心に決めて、少し離れた場所にある、お茶漬けのお店へと足を向ける。


だけど、不意に視界の端に見えた待合室に気づいて足を止めた。

以前、シンガポールに行った時に常務と資料の確認をした場所。

そっくりそのまま残ってるもんだから、なんだか懐かしく思えた。


あの日も、こんな朝早い時間だったな。

今思えば、いつも振り回されてばっかりだったなぁ。

戻らない日々を懐かしく思いながら、じっとその場所を見つめる。

だけどそんな時、不意に携帯の着信が鳴った。

誰だろうと思い、画面を見ると思わず笑ってしまった。



「本当、タイミングいいですね」

『え、何の話?』

「いいえ。こっちの話です。先輩」



電話の相手は、菅野先輩。

昨日メールで、今日の朝に日本を発つ事を知らせたから、わざざわ電話してくれたんだろう。



『今、成田?』

「はい。今から二回目の日本食の食べ納めをしようと思ってたんです」

『なんだよ、2回目って。で、蕎麦? うどん?』

「残念。お茶漬けです」



互いにクスクスと笑いながら、いつも通りに会話をする。

最後にご飯でもと思ったけど、荷造りに手間取って会う事ができなかった。

あんなにお世話になったのに、申し訳ない。

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