その手が離せなくて 【完】 

第1章 /繋がったのは



「寒・・・・・・」


空に向かって、はぁと吐いた息が白い。

火照った体を冷やす為に外に出たはずだったけど、あまりの寒さに凍えてしまいそうだ。


大きく息を吸えば、キンとした冷たさの中に緑の香りがする。

山の中だからか空気が澄んでいるんだと思う。

今では慣れたけど、上京したばかりの頃は東京の空気の汚さに驚いた。


「はぁ・・・・・・」


無意識に零れた溜息が、誰もいない世界に落ちる。

後悔、している。

奥さんの事、聞いてしまった事に。

嫉妬の渦が大きくなって、飲み込まれてしまった。


私はピエロだったんだと思う。

ちょっと脇見をして、つまみ食いしただけ。

だって私と彼、どう見たって釣り合わない。


超エリートの完璧な一ノ瀬さんと。

どこにでもいる様な、平凡なOLの私。

誰が見ても、釣り合わない。


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