その手が離せなくて 【完】 

第1章 /密会

カタカタカタ。

カタカタ・・・・・・。



不規則な様な、規則的な様なパソコンのキーを打つ音が聞こえる。

いつの間にか年を越して、長い長い年末休暇が終わった。

今年は一段と長かった様に思える。

早く明けないか待ち遠しかった。


「あれ~望月、早いね?」


まだ空のデスクが多い朝の早い時間。

出社してきた先輩が眠そうに目を擦りながら、私の隣に腰かけた。


「年末に会社に迷惑かけたんで、少しでも恩返しをと」

「あ~例の神隠し事件ね?」

「ちょっと、せめて迷子事件にしてくれません?」


苦笑いを浮かべた私に、先輩がケタケタと笑う。

うちの部署ではもうすっかり話題の、この『神隠し事件』

悪い意味で、私は出席していた企業に顔を覚えてもらった。

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