その手が離せなくて 【完】 

第2章 /春に



「はぁ・・・・・・」


無意識に出た溜息に気づいて、慌てて顔を取り繕う。

会議中だっていうのに、全く集中できない。


あれから何週間か経った。

桜の花は散ってしまった。

道端には、踏み潰されたみすぼらしい桜の花びらがあるだけで、木々は緑色に染まってきた。

彼からの連絡は、ない――。



「なんかあったの?」


会議が終わって事務所まで帰っている最中、私の顔を覗き込んで話しかけてきた先輩。

その姿に小さく微笑んで、首を横に振る。


「いえ・・・・・・」

「会議中、溜息ばっかり聞こえた気がしたけど?」

「あ、すいません」

「仕事? プライベート? よかったら聞くけど?」


いつもお世話になっている先輩が、心配そうに首を傾げた。

その様子を見て、相当酷い顔をしているんだなと察する。



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