Bloody wolf(完結)

自覚する思い /向けられた悪意





晴成に言った通りに、電話をしたら雷牙君は直ぐに来てくれた。

着いたと連絡が来たので、晴成達とクラブの外へと向かったが、正面入り口前にドーンと停められた黒塗りの高級車に度肝を抜かれた。


「響、いつもの車と違げぇ」

私の隣を歩く晴成が怪訝そうに車を見据えて警戒する。

「確かに違うよね」

でも、実は見覚えあったりする、あの車。

だってお祖父ちゃんがよく乗ってくるもの。



「よう、迎えに来たぜ、お嬢」

運転席から降りてきた雷牙君に溜め息を漏らしたのは言うまでもない。

こんな目立つ日に、どうしていつものファミリーカーじゃないのかと思わずにいられない。


ざわつく周囲を無視して、雷牙君は私だけを見据えて笑ってる。

本当、勘弁してよ。


迎えに来てもらって言うのもあれだけど、この登場は有りがたくない。


「車、何時ものじゃないんだ」

不満を漏らした私に、

「ごめんごめん。あの車故障したんだよなぁ」

悪びれる様子のない雷牙君。

急に呼び出したのは私が悪いから、今回は仕方ないと諦めよう。


でも・・・でも、せめて裏路地で待ち合わせるとかしてほしかったよ。

この車で来るって聞いてたら、クラブの前まで迎えに来てもらわなかった。



「そう」

「まぁ、そんな嫌そうな顔すんなって。これ乗り心地いいし」

そりゃ高級車だもんね。


ここで押し問答しても目立つだけだから、さっさと車に乗り込もう。


「じゃあ、帰る」

「ああ。また明日」

「ん・・・はぁ?」

頷いて軽く手を振って歩き出そうとした私の手を晴成は突然掴む。


ゆるりと口角を上げた悪いその顔つきに嫌な予感がした。


ヤバい、そう思った時には晴成の顔はすぐ近くにあって、フードから少しでた私の頬にチュッと音を立ててキスを落とした。


「なっ」

抗議の声をあげようにも、突然の事に反応できなくて。


「これからは攻めてく事にしたからな」

ニヤリと笑った晴成。

挑戦的に見つめるアンバーな瞳にドキッとした。


周囲で甲高い悲鳴がこだまする。

ざわめきは大きくなり、その場が騒然となる。


はぁ・・・・本当、勘弁してよ。

赤くなる顔を俯かせて、この場から立ち去る為に雷牙君の開けてくれた車の後部座席へと飛び込むように乗り込んだ。



背後でバタンと閉まるドア。

外界と遮られた事に、少しだけホッとした。




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