狂愛【完結】

明里さんは、光樹をまっすぐに見ると、顔を歪める。


「下っ端?はっ、あなたに下っ端は似合わないわ?
あなたは柊の頭に立つ人間だもの。
だから、あいつらにあの邪魔な男を殺させたのに。
・・・なのにあなたは、約束された地位とウチを捨てて、一人西へ行くと言うの?冗談じゃないわ。」


そう吐き捨てた明里さんに向かって、咲さんが一歩前に出た。



「・・・待って。殺させたって・・・」



震える声でそう言った咲さんを、明里さんは鼻で笑う。


「実行犯をけしかけたのは、私。
薬をあげて、抱かせてあげたら従順だったわ?」


そう言い放った明里さんの顔は残忍に歪んでいる。


「っっ!そんな!」



倒れそうになる咲さんを奏の腕から出て支える。



そんな咲さんを怒りの表情で見た明里さんは、更に話を続けた。


「ヒドいって?じゃああんたの父親が光樹に何をしたのか知ってるの?光樹の気持ちも考えないで、『若頭になる自覚を持ってください』だって。
自分の方が相応しいと噂されてるのも知ってるくせに。
私が初めて出会った頃の光樹は目も当てられないほど荒れてたわ?
そんな彼に、あいつは頭ごなしに自覚を持ての一点張り。」


叫ぶようにそう言う明里さんを、柊光樹は無表情で見つめている。


「極めつけは抗争の時よ。組員はみんな、若頭の光樹をバカにして、あんたの父親に従った。
それを当たり前のように指示してたあんたの父親を見て、【柊】に背を向けて去っていく光樹の顔は、今でも忘れられない。」



涙を流す明里さんを見て、咲さんは辛そうに顔を歪めた。


「だから私は排除してやったの。光樹にとって壁でしかないあの男をね?」



明里さんの顔が残忍に歪んだ。

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