狂愛【完結】

季節は梅雨前。

5月中旬に入り、私は会社で仕事をしていた。


大学は2年から休学。


予定日を過ぎても産気付かない私に、周りだけがヤキモキ。


焦っても仕方がないと、私はのんびり構えていた。


明日の定例会議の資料に目を通していると、お腹に違和感を感じた。


「イタッ、」


「どうした?」


すかさず隣の奏が反応。


「・・・ちょっと、痛かったけど、おさまった。陣痛かも、ね?」


「チッ、」


奏が素早く内線を押す。


『・・・はい。』


「隼人、ゆいかが産気付いた。鉄に待機させて篠崎にも連絡を。
陣痛が5分おきになったら移動する。」


『えっ!マジで!?おいっ、結城聞いたか』


ガチャッ!!


完全に狼狽えている様子の隼人の言葉を奏が途中で切った。


「隼人、狼狽え過ぎじゃない?」


「・・・お前が落ち着き過ぎだ。」


「・・・奏もね?」


私たちは、ソファーに寄り添いあいながら腰掛けて、痛みの間隔が狭まるのを待った。


それから陣痛が5分おきになって病院に運ばれた私。


何故か隼人と結城さんが号泣で私の片方ずつの手を握ったもんだから、奏が激怒で蹴りを入れられていた。


奏が立ち会う気満々で分娩室に入ってきたから、助産師さんがいきなりの奏の登場に動揺全開。


「すっ、素敵な旦那さんですねっ?」


噛み噛みで狼狽える助産師のおばさんに、痛みもあって苦笑い。




・・・・・7時間11分後



5月23日、新城家長男、誕生。



「名前は、秋(あき)だ。」


鉄さんが書いたらしい豪快な毛筆と共にどや顔の奏が言い放つ。


「由来は?」


「お前が秋生まれだから。」


「・・・・。」


奏の理想は4人らしい。


春夏秋冬をそれぞれ名前に入れる気なんだとか。


・・・私、あと3人産むんだ?


「弟たちをヨロシクね?」


生まれたばかりの秋に微笑んだ。


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