狂愛【完結】

出産 /父子の歩み



生まれた秋を奏が初めて抱いた時、本なんかで読んだ『狼狽えるお父さん』的なリアクションを期待していた私と隼人の輝く目はあっさり打ち砕かれてしまった。


「・・・完全に俺に似てやがる。ゆいかに惚れんじゃねえか。」


苛ついた奏があっさり片手で抱いて威嚇するように我が子を睨んでいるのを、鉄さんがユルユルの目で微笑む。


そんな時ノックと同時に静かに開いた扉。


ニコニコ顔の弘人が登場。


「俺の弟はどこかな?」


「キモ。」
秋を片手で抱いたまま奏が軽蔑の視線を送る。


「いないから帰ったら?」
苛ついた隼人が吐き捨てる。



「弘人?おいでおいで。」


私が手招きするとすり寄ってくる弘人のお尻から尻尾が見える気がするのは気のせい?


弘人は私にニッコリ微笑む。


「頑張ったね?お母さん。」


「ん。でももう立ち会いはイヤかな。」


「あ゛?どういうことだ。」


眉間に皺を寄せた奏がこちらを見る。


「だってさ、奏にびっくりした助産師のオバサンは狼狽えまくりだし、奏は秋に『ゆいかのそこを拝んでいいのはこの俺だけだ。』とか言って威嚇してるし。
痛みよりも羞恥が勝りました。」


そう言って万歳した私はため息をついた。


「・・・秋って?」


弘人が首を傾げる。


「この子の名前。私が秋産まれだからって奏が。」


「「「「・・・へぇ。」」」」


命名の理由に、皆がなんともいえない顔をしたのには、気付かないフリをする。


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