狂愛【完結】

東対西 /嫉妬の定義

side ゆいか


浴室に足を踏み入れれば、奏が私を浴槽の縁に座らせた。


「・・・どうしたの?」


奏の目は伏せられていて、表情は伺えない。


しばらくお互いに黙っていると、奏が私の流れる髪を一房掬い取って鼻を押しつけた。


「・・・他の男の、匂いがしやがる。」


奏のそんな低い声に、私の肩がビクリと強ばった。


上げられた奏の表情は、嫉妬に歪んでいる。


「翠に来て貰って助かった。あのままじゃ、お前を手加減なしで抱いてたからな。」


「・・・ごめんなさい。」


謝るしかない私に、奏が避難の目を向ける。


「・・・それは、お前があのクソを少しでも受け入れたって事か?」


「っっ、そんなわけ、」


「ねえよな?」


奏の強い目に、私は怯む。


「下らねえこと考えんな。お前が謝る理由は全くねえ。」

「ん。」

「だが・・・」

奏の嫉妬に狂った目が鋭く私を射抜いた。


「他の男の匂いを付けているのは、我慢ならねえ。」


「っっ、早く洗いたい。」


もうお互い服を脱いでいるのに、奏は一向に体を洗おうとはしない。


奏は艶のある目を、私の身体に向けた。


「チェックすんだよ。」

「・・・なにを?」


ギラついた奏の目は、私の内ももの爪痕をなぞった。


あの男が付けた傷跡を。


「俺のものにこんな・・・」


「っっ、」


奏の舌が、傷跡をなぞる。


「許さねえ。お前の身体に残る傷は、全て俺が付けるべきだ。」


「・・・っ、イッ、」


傷跡の上から、奏が噛みつく。

鋭い痛みに身を捩れば、逃がすまいと奏の腕が腰に回った。


傷の上から、奏が付けた【証】が上塗りされる。


傷口から流れる血を満足そうに眺めた奏は、再び舌を這わせた。


「・・・ぁ、」


赤い血に塗れた奏の唇は、妖艶に弧を描く。

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