支配者【完】

狗神 /笑顔の裏で

side 玲



そこは、俺という神が降りてこないはずの場所だ。


『あの方はまだまだ足りないとおっしゃっています。』

『しかしな、もう無理だ、南。』


だからといって、俺の側の人間がいないとも限らなかった。


『でもっ、あの女が欠陥品だと神に気付かせなければっ、』

『シッ、誰が聞いているか分からないぞ。』


それでも、この者たちは俺たちに分からないように、行動していた。


『万が一だ。なんせここは神の屋敷なんだから。』

『恭一(きょういち)、でもっ、』

『……黙れ。』


糸を引いているのは、男。そして、それをまた、操作しているのは、別の人間。


「その話、詳しく聞かせてもらおうか。」

「「っっ、」」

息を呑む2人が身を潜め、雫を壊す方法を考えているのは、この屋敷に仕える人間たちがいる、エリア。

そして、雫が毎日通っているはずの、調理場の側だった。

まさか俺が″降りてきた″時に、俺の知りたかった情報を話しているとは。

それともそれほど。神の妻を貶めても誰も反応しないほど、ここは″堕落″しているのか?

これから俺に壊される″女″を、見ていたのがいけなかった。


瞬間、男の目がキラリと光り、

「っっ、」

女ののど元に、小さなナイフが刺さる。


「…ふむ、やってくれたな。」


そう言った俺の足下に、不快な女の真っ赤な血が飛ぶ。


それをジッと見つめていれば、男が女ののど元から勢いよくナイフを引き抜いた。



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