支配者【完】

沖田家 /霧

side 雫





それはあらゆる者の視界を遮り、道を阻む。

だけれどそれは、自然界の美しさも同時に表す。

霞がかった光景は美しく、神秘的なそれは人々にため息を吐かせる。



霧を前にすれば、雫がいくら落ちようとそれは、消すことなんてできない。

何度雫が落ちようが、霧は少し、乱れるだけで、すぐに全てを飲み込んでしまう。



雫が勝てなかった、霧は今、苦々しい表情でその目を憤怒に彩っていた。



それに気付かず。私は玲の優しさに包まれ、全てから目を背けていた。


いや、そうじゃないかもしれない。


霧をも支配する、神の大きさに包まれて、私は幸せだけに包まれていた。



神は、雫の目を塞ぐ。それによって見えた暗闇は、雫にとって居心地の良いものだった。



罪深い私は、お姉さまのその後を知らない。

いやそれは、知らなかった方が良かったのかもしれない。


玲のぬくもりに包まれ私は、病気を理由に、本当に向き合わなくちゃいけないものに、背を向けていた。



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