支配者【完】

神で支配者 /雫と玲

side 雫



「少し、薬の回数を減らしてみたいのですが……、」


私がそう言うと、脈をとっていた桐生先生はそれを離し、ゆっくりと視線を上げた。その目には、呆れも、嘲笑もなく、穏やかで。

ゆっくりと、ため息にも似た息を吐き出した。


「頑張っていますね。」

「……そう、なんでしょうか。」


問いかけに深く頷いた桐生先生は再び、私の震える手を取った。


「一歩、進もうと思った。それは頑張っている証拠ですよ。」

「……はい。」


桐生先生の手は、温かい。それは、玲のそれとは違う温かさだった。言うなれば、お父さんのような…お兄ちゃんの、ような…、

と言っても、私にはその温もりなんて分からない。だから言い切ることはできないのだけれど……


ほっこりとするこの気持ちは、安心から来るものだ。


こうやって、安心できる人がいる。そして、玲がいる。だから私も少し、一歩踏み出してみようと思った。


「理由は、話せますか?」


そう聞いてくれる先生は、強要はしない。私のペースに合わせ、私の背中を押すのではなく、自分で決められるように、進めるようにしてくれる。

コクリと頷けば、手を放して私をまっすぐに見てくる。


真剣な表情は、私の少しの変化も見逃さない、という態度の表れ。


だけどこれから言う理由は、少し照れくさくて…顔の温度が一気に上がった。


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