支配者【完】

夫婦 /新婚旅行

side 玲



「フフフッ、」


思わず零した俺の言葉に、雫は笑い出してしまった。


「何がおかしい。」


流石に不愉快になり、眉間に皺を寄せる俺に、雫は涙目を向ける。どうやらその笑いは、収まりそうにないらしい。


止めようとする様子もない雫はお腹を抱えて笑う、という感じではないが、とても楽しそうに笑っている。


あざ笑われればまだ納得がいくが、快活な笑い方はなんだか、俺の顔を紅潮させた。


自分のこの悩みが見透かされ、それは杞憂だと笑われているように感じたからだ。


「雫。」

窘めるように名を呼べば、笑いを納めた雫は、首を傾げ、微笑んだ。



「っっ、」


優しい笑顔だった。

心の底から、愛情を感じるような、そんな。


この世に生を受け、誰1人として俺に、こんな目を向けてきた者などいない。



「雫、」

「馬鹿な人ですね。」


仕方が無いとばかりに吐かれたその言葉は不快な言葉なはずなのに、軽快さを含んでいるように聞こえた。


「なにがだ。」

不思議と、イラつきはしない。今まさに馬鹿にされたはずなのにだ。


惚れた女には、男は弱くなると言うが。


まさに俺は、そうなのだろうか?



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