支配者【完】

夫婦 /行きたい所

side 玲



雫が希望した場所は、電車を乗り継いで行く場所でも、車を長時間走らせた場所でも、飛行機が必要なほどの遠方でもなかった。


「なぜ、ここなんだ?」

「え?」


神の神殿から車で1時間もかからない場所にここはある。世界に誇る高級ホテルであり、俺に来客がある時もここを用意する。

品位も、格式も申し分のないこの【グランホテル】は、セキュリティーも万全だった。


ただ……


「だから、なぜこんな近場なんだ?」


神殿から近いここは、旅行と呼ぶにはあまりにも近すぎる。それこそ、何か忘れ物をすれば取りに帰れる距離だ。


最上級のスイートルームの一室、部屋を見渡した雫は、俺にキョトンとした顔を向けてくる。


可愛いのは、いい。しかし納得はいかない。


「ここは神殿から近いだろ。」


俺としては、どこかの島に1ヶ月は籠もりたいと思っていたくらいだ。手頃な無人島はないものかと思っていた所へ、上目遣いで雫にねだられてしまった。


俺が、雫の願いに抗えるわけもなく、すぐさま目的地は決まってしまう。


ここまで夢の無い場所だと、雫に地平辺りが吹き込んだかと疑ってしまうほどだ。


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