支配者【完】

人 /真昼の戦争

side 雫


それは、突然起こった。

いや、玲には予想できていたことかもしれないけど。


私も、薄々。


だけどこんなにも、乱暴に、一方的に動くとは思っていなかった。



「雫様っっ、」

「っっ、はい?」


襖越しの伺いもなく、地平さんが慌てた様子で入室してきた。目を見開いた私は読んでいた本から視線を上げて、普通じゃない様子の地平さんを見ていることしかできない。


「あ、桐生先生?」

「こんにちは。」


慌てている地平さんの背後に、桐生先生がいつもの穏やかな表情で立っていて。


「どうしたんですか?」

「…ああ、」


私の質問に答えをくれない桐生先生は、地平さんへと視線を促した。


「少し、物騒な者たちが敷地内に侵入しました。」

「っっ、」


その言葉で、この部屋の雰囲気はピンと張り詰めたものへと変わる。


不安が広がる。私の心にも、足元にも。黒い霧がじわじわと、口角を上げて漂っている。


それでも、心配なのは。


「っっ、雫様!」


玲。


綺麗に拭き取られた屋敷の木の廊下を、足袋で走るのはとても難しい。

普段着を買いそろえてもらったとはいえ、玲の仕事が終わるまで、私は着物で過ごしている。


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