支配者【完】

人 /差

side 地平



叫んだ雫様を気にせず、玲は一点に、顔を歪めた八神を見ていた。



今にも噛み切ってしまいそうなほど奥歯を噛みしめている八神は、パソコンに映し出されているであろう、愛する女を確認しようと、走り出す。


それを止めるのは、素早く動いた蒼羽と海渡だ。


「っっ、離せっ!!」


滑稽だと思った。八神はなにを勘違いしているのか。



「質問しよう。」



ゆっくりと言葉を紡いだこの、狗神の残忍な笑顔の裏に隠されている確信は、八神が信じて疑わない、この女の本性を暴くというのに。



『っっ、玲様っ、』



パソコン越しに、霧の声が聞こえた。その切なさを孕んだ声は八神の足をピタリと止め、雫様の顔に不安を浮かべる。



「助かりたいか?」


玲の至極簡単な質問に、迷いを見せない沖田霧は、真っ青な表情のまま深く頷いた。


この女は情報部の奥にある一室に入れられている。そこは綺麗に掃除されてはいるが、取れることのないかすかな臭いが、雰囲気が、入室した者に感じ取らせる。


『嗚呼、助からないかもしれない。』と。



前雫様に見せたモニターの一つの部屋。そこに霧は攫われ、入れられていた。



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