支配者【完】

人 /葛藤

side 玲


部屋へと戻り、俺の胸で眠る雫を桐生に診させた。


呼吸は荒げたものの、それほど強い発作はなく、雫は穏やかな寝息をたてていた。


「悪かった。」


桐生が出て行って、俺と雫だけのこの部屋。俺の口から零れ落ちたその言葉は、今までの俺では理解できない感情から発せられたものだ。


「なぜ、謝るんです?」

「……起きていたのか。」


雫がゆっくりと瞼を開ける。浮かんでいるその表情がどこか責めているように見えるのは、今俺の中で浮かんでいるこの感情が影響しているのか。


「なぜ、謝るんですか?」

「……。」


強くそう聞いて来る雫の質問に答えることができない。それは自分でもなぜ、謝ったのかが分からないからだ。


しかし、謝罪の原因は数多くある。


「玲。」


雫の催促に、俺の顔は下がるばかり。どんな状況でも何も感じないはずの俺が、常に前を向いているはずの俺が。


情けない。


そんな俺を、温かい何かが包む。


「どんな貴方でも、玲は玲です。」

「っっ、」


ありきたりな言葉だ。それは偽善にまみれ、人の胸を打つ道具でしかない。それなのに、今の俺の胸には強く響いた。


「お前を、あの場にいさせるべきではなかった。」


だからだろう。ポロポロと零れ落ちだしたのは、雫への懺悔。


0
  • しおりをはさむ
  • 6480
  • 11183
/ 494ページ
このページを編集する