支配者【完】

この街 /妻

side 雫



眠っていた私の意識は、足元あたりのシーツが動いたことで浮上した。


何事かと思い、重い瞼を開いてみてみれば、相変わらずの目が鋭く私を睨んでいた。


「あ、おはようございます。」

「……。」


私の言葉を聞いていない彼女は、ふいと視線を逸らすと、箒を乱暴に動かしだす。

掃除の邪魔をしてしまったかなと、居心地悪くなってしまって、ベッドの上で身を縮こまらせた。


そんな私を見もしない彼女は、掃き終わったのか今度は雑巾がけを始める。


その光景を見ていることしかできない私、黙々と掃除をこなす彼女。この部屋の雰囲気はただただ重苦しい。


「あの、」

「……。」


声をかけるも、彼女には聞こえていないらしい。ちょっと声が小さかったかな?少し、息を吸って、ためてみる。


「あの!」

少し大きく吐き出されたそれのせいか、彼女の動きがピタリと止まり、振り返ったその表情は不機嫌そのものだった。


「何か?忙しいんですけど。」

「あ、え、と、」


嫌そうにそう答えた彼女は、この御所で玲の身の回りの世話をしているという、奥橋南(おくはしみなみ)さん。


どうやら見ての通り、私は嫌われているらしい。


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