支配者【完】

さ迷う彼女 /発症

side 玲


「雫は?」

「今、眠っていらっしゃいます。」


大学で講義を受けていたところ、緊急の知らせがあったのは先ほど。


すぐに指定された病院に行けば、雫の病室らしい個室の前にいた海渡がそう言った。


そっと、ドアを開けて病室に入れば、左手が包帯で包まれた状態の雫が私服のまま、ベッドに寝ていた。


「医者からお話があるそうです。よろしいですか。」

「……。」


寝ている雫を気遣ってるのか、海渡が小声でそう聞いてくるが、俺はすぐには反応ができないでいた。


顔色は良い気がする。それが唯一、俺を安心させた。


ベッドのふちに座って寝ている雫の額をそっと撫でてみれば、当たり前だが温もりがある。


そんな当たり前のことにホッとしたが、すぐに包帯が目に入って顔を顰めた。


「待ってろ。」


それだけを言って立ち上がれば、海渡が頷く。雫の担当であるこいつは病室の前に残る。俺以外と雫を室内に2人きりにさせないためだ。


夫であるはずの俺は雫の元を離れて医者に会わなければならない。室外で待機とはいえ、海渡と役割が違うだろ、とイラつく自分もいるが、医者の言うことは雫自身のこと。


家族である俺が聞くのは当たり前のことだ。


この少しの時間も離れたくはないのかと、自分に苦笑いするしかなかった。

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