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奏とゆいか /バレンタインデーの悲劇

side ゆいか


「マジの助?」

「うん。マジの助。」



教室で本を読んでいる私が何気なく呟いたその言葉に、真琴は丸々と目を見開いて固まっている。


「あちゃー。」

「……。」


わざとらしく、目を手で覆って主張して見せているけど、うん、それは見なくてもいい。


本から視線を外さない私の視界の端で、なんとかこちらを向かせようと、手を振ってみたり、大きなため息を吐いてみたり。悪戦苦闘のその姿は、流石田島兄妹だと思う。

そんなこと言ったらしばらくふてくされるから言わないけど。


「おーい。」

結局無視に耐え切れず声をかけちゃうところが、隼人にそっくりで。


「フフッ、」


思わず笑ってしまう。

だけどここからは少し……


「ちょっと本を閉じなさい。」

「はい、すいません。」


お兄さんとは、違う。鬼の形相の真琴に命令されて本を閉じると、それは没収されてしまう。

……いい所だったんだけど。


真琴の机の上に乗るそれを名残惜しそうに見ていると、私の視界いっぱいに真琴のつけまつげが。


「人の話を聞きな。」

「すみませんでした。」


その血走った目、どうにかならないかな?苦笑いしか出ない。


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