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366日、彼らは笑う。 /3月9日 脈の日 夏流×朔真

side 朔真



「……。」



家に帰ってきてから、夏流の様子がおかしい。

今日は別になにもおかしなことはなかったはず。学校でもいつものように授業を受けていたように思う。


しかし帰りの車中から部屋に帰ってまで。こうして沈黙を保ち続けている。


「どうした?」

「ん?」


気だるげに髪を払った夏流の甘い香りがふわりと鼻腔をくすぐる。その憂いを帯びたような表情も、俺の心臓を刺激するには十分だ。


「元気ないな。」

「ちょっと、考え事してるだけ。」


俺が頬に手を滑らせれば、夏流はすり寄り目を閉じる。これが当たり前なことに、未だに慣れずに思わず頬を緩めてしまう。


夏流は考え事をしているだけだと誤魔化すつもりかもしれないが、一瞬だけ見せた疲れたような表情が俺の不安を煽った。



「休むか?」

「ううん。」


そうは言っても、俺の胸に頬を寄せる夏流が心配でしょうがなくなってくる。

しばらく、夏流を強く抱きしめた。華奢なこの身体から少しでも嫌なものが出て行くように。

「…………なぁ、」

「ん?」


なのに、だ。抱きしめられたまま、夏流の指先は俺の体の至る処を這っていくから、思わず声をかけざるを得ない。




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