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366日、彼らは笑う。 /4月14日 椅子の日 奏×ゆいか

side ゆいか



ある日、私たちがいつも座っている黒い椅子に、座れなくなってしまった。


「ごめんなさい。」

「大丈夫だよ、秋。」


秋が弘人とふざけていて、1ℓの紙パックのジュースを全て零してしまった。


勿論椅子は大惨事。とりあえずタオルでジュースは吸収してみるけど、焼け石に水だ。


「お父さん、怒る?」


涙目の秋が私を見上げる。確かに零したのは悪いかもしれないけれど、わざとじゃないんだから……


「怒らないよ。」


奏は絶対に怒ったりしないと思う。


「乾けば分かんないって。」

「……弘人は怒られると思うよ。」


自分がジュースを持った秋を追いかけまわしたせいなのに、全く反省していない様子の弘人は、眠っている春を腕に抱いてニコニコ笑っていた。


「なんでさ?」

「……。」


首を傾げる弘人。ほんとに、奏殴っちゃうかもしれない。


小さく溜息を吐いて、ソファーを見つめた。


このソファーには思い出が詰まっている。奏はいつもこのソファーの上で私を抱きしめてくれた。


不安な時も、泣いている時も、笑っている時だって。だからこのソファーは、私と奏にとって、何よりも大事なものだ。



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