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366日、彼らは笑う。 /5月1日 恋が始まる日 秋×弓

side 秋



ネットカフェで拾ってきた女は、酷く苦しげに顔を顰めている。


初めて見た顔が、苦しむ顔なんて。別に俺はロマンチストじゃないが、できれば笑っている顔が良かったと思う。


同時に、こいつをそうさせた何かに殺意が沸く。


「……たる、」

「っっ、」


何度も、うわごとのように呟かれるその名前は、お前の想い人か?それとも……


「弓、早くよくなれ。」


それはもうどちらでもいいから、俺はお前の素顔が見てみたい。


熱にうなされ、苦しそうに喘ぐその姿じゃなく、お前の笑顔が見てみたいんだ。



ストンと落ちた。こいつを見た瞬間に。



それならば俺は、これからどう出ればいい?


その名前の主を消せば、お前は俺を見てくれるのか?


それとももう、お前の心はその男のものか?



片思いなんて、情けねえけど。全く知らないお前を、泣かせたくないと思った。


お前が俺のものになるかは分からねえが、俺はお前のことを知りたいと思う。



例え他人の手でお前が幸せになっていくのを見続けることになったとしても俺は、お前という人間を知りたい。



柄にもない。欲しければ奪えばいいのに。



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