366

366日、彼らは笑う。 /5月8日 声の日 玲×雫




玲の声は、とても心地よい低音。


「雫?」


その声が紡ぐ言葉は静かでどこか、寂しそう。


「どうした。」


そう尋ねる声音は、焦燥を含んで。


「なぜ答えない?」


我慢が苦手なせいで、それは不機嫌さを表す。


「聞こえては、います。」

「だったらどうして返事をしないんだ。」


声でも、言葉でも、怒っているはずなのに、私を抱くその腕は、離さまいと縋りつく。



「玲の、」

「ん?」


しなやかな指先、金色の目。美しい髪は月明りに照らされ、鈍く光った。


「声が好きなんです。」

「……それは、初耳だな。」


見開かれた目は嬉しそうに細められるけれど、素直じゃないせいでそれはすぐに取り繕われてしまう。


だけど、もう無駄なこと。


「お願いがあります。」

「……なんだ。」



月明りの下、玲の腕に包まれて、愛おしいその瞳に自分だけが写っている。


「私の名前を、」


これ以上の幸せなど、私は知らない。


「もっと、呼んでください。」


至近距離、返事をすることもなく、狗カミは私にキスを落とす。


「何度でも。」


貴方に愛されたのならば、私はきっと、今死んでしまったとしても、後悔はしないでしょう。




0
  • しおりをはさむ
  • 5984
  • 10932
/ 693ページ
このページを編集する