366

366日、彼らは笑う。 /7月20日 夏割りの日 奏×ゆいか

side 奏



「奏、これなーんだ!」



ゆいかが悪戯な笑みを浮かべて俺に差し出す物。


「果汁絞るやつだろ。」

「うん。」


楽し気な表情に影響されてか、俺もなんだかそわそわしてしまう。


「レモン貰ったの。だから、今日は割って飲まない?」

「……そうだな。」



夏の暑い日はうんざりする。だから俺たちは夜、冷たい酒を飲むのが日課だった。


ウキウキ顔で酒の用意を始めるゆいか。本人は恥ずかしがって隠したがっているが、かなりの酒好きなのは一目瞭然だ。


「今日はベランダで飲もっか?」

「あちいだろ。」


そう言えば、ゆいかが笑う。


「大丈夫、冷たい食べ物も用意してあるし。」

「……ああ。」


くるりと振り返って笑うゆいかの笑みに押され、めんどくせー夏の暑さくらいなら我慢してもいいかと思ってしまう俺も俺だ。


苦笑いを零して外を見れば、心なしか暑さで月夜が揺らめいた気がした。


「奏?」

「ん。」


窓から視線を戻せば、ゆいかが笑う。その笑みは俺に絶対的な圧力をかける。


「外の机の用意、お願い。」

「ああ。」


俺を使うのなんてこいつくらいだ。それなのに自然と動く体は自分が素直に従ってしまっていると証明している。





0
  • しおりをはさむ
  • 5984
  • 10930
/ 693ページ
このページを編集する