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366日、彼らは笑う。 /8月23日 処暑 奏×ゆいか

side 奏



「ふう、まだまだ暑いねぇ。」

「……。」



額に流れた汗を手に持つハンドタオルで拭ったゆいかは、卓上で汗をかいているアイスコーヒーを一口飲んだ。


ゆいかの喉が鳴る。小さく吐かれた溜息が妙に艶めかしく、暑さで喘ぐゆいかの赤く色付いた頬に、不覚にも胸が弾んだ。



「ね?」


同意を求めるようにゆいかが俺に近付くが、俺の視線はしきりに、薄い布で覆われた汗ばむ体に向いている。


「もう。」


その視線に気付いたのか、ゆいかが口を尖らせる。仕方ないなとばかりに溜息を吐くのに、距離は取らないらしい。



「優しいな。怒らないのか?」



聞けばゆいかは、照れくさそうにはにかんだ。


「だって私だって、奏の首筋に流れる汗とか見るとドキドキするし、未だにお腹とか見るとううってなるし。それに腕。腕の血管とか、素敵だよねっ。」


「……そうか。」

「ん。」


頬に手を添え、少女のように目を輝かせて語っているが、話していることはまさに変態親父だ。



「奇遇だな。俺もお前に欲情することならいくらでも言えるぞ。」

「ふふっ、なにそれ。」


どうやら俺たちは、揃って馬鹿らしい。


「とにかく、キモは汗だな。」

「なんか変態チックだね。」



処暑しょしょと呼ばれるこの季節。暑さもそろそろ収まるはずだ。しかし、一向に引かない暑さ。この辛さを、ゆいかで楽しむのに罰は当たらないはずだ。




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