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366日、彼らは笑う。 /9月23日 お墓参りの日 奏×ゆいか

side 奏




墓の前で手を合わせるゆいかは、壮年期に入ってから更に色気が増した気がする。



きっちりと揃えられた細い指先は綺麗に手入れされ、凛と筋の通った姿勢の良さは更に俺の欲情を煽る。


墓参りだからか、黒い着物に身を包んだゆいかは、まさに美の化身。



「奏?」

「あ。」


ゆいかの切れ長の目に俺がゆっくりと移ると、その赤い唇は薄く開いた。



「やかましいわ。」

「は?」



俺を見る目は楽しそうに笑っている。そして、からかうような表情は巧みに俺を誘う。


「表情が。また何か変なことを考えてるんでしょう?」

「バレたか。」

「フフッ。」



口元に手を当て、笑うゆいかは、俺の妻。


「長く一緒にいれば丸わかり。」

「お前くらいだぞ。」

「そう?そんなことないと思うわ。」


今までも、そしてこれからも、死んでからも。



こいつは俺を、俺はこいつを、見続ける。



「じゃあ、俺が今言いたいことが分かるか?」

「ん。ベッドに行きたい、でしょ?」

「チッ、正解だ。」

「ふふ、なんで悔しがるのよ?」



笑うゆいかに手を差し出せば、立ち上がって、墓を振り返る。



「じゃあね、まりか。また来年。」

「もう来なくていいぞ。」



俺が変わりに返事してやったのに、笑うゆいかはどうせ来年も来るのだろう。


あの女は絶対に言ってると思うぞ。



もう来なくていいってな。


同意見だ。



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