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366日、彼らは笑う。 /10月9日 散歩の日 奏×ゆいか

side 奏




「奏、いる?」

「お疲れ様です!」


珍しくゆいかが事務所まで降りてきた。すかさず下っ端の馬鹿共がゆいかの鼓膜を破ろうと馬鹿デカい声で挨拶するもんだから、見ろ、怯んでるじゃねえか。



「ゆいか、来い。」

「あ、うん。」


申し訳なさそうに小さく頭を下げながらこちらへ来るゆいか。その挙動の可愛さは俺が保証する。


だとしても、だ。


「見すぎだ。殺すぞ。」

「すいやせん!」

「っっ、つい!」



殺気を繰り出せば奴らは素早く視線を逸らすが、結局チラチラ見ちまってるのが見えている。


マジで、こいつらの目をくりぬいてやろうか。こんな男だらけのムサイ事務所に常にいて、しかも職業柄、ゆいかほどの女を抱けねえのは分かるが。


いや、この世にゆいかクラスの女はゆいかしかいねえんだから、結局一生無理か?


だとしても、だ。俺の女を視界に入れるなんざ人生丸ごと捧げても許可するわけにはいかねえ。



「機嫌悪いね。」

「あ?」



俺の前まで来たゆいかがそう言った途端、この場の空気が凍り付いた気がした。


「はっきりと。」

「やべえ、殺られる。」



ゆいかの背後で、好き勝手言いやがるくそ共の声が聞こえる。対してゆいかは座る俺を笑顔で見下ろしていて、俺と違ってご機嫌なのが伺える。




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