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366日、彼らは笑う。 /10月23日 霜降 春×華

side 華



「お疲れ様でしたー。わ、さぶー。」



ホテルの温かな廊下から出ると、外の寒さに顔を叩かれた気がした。


季節も秋が終わり、冬の到来を感じさせるような気温になってきている。


「もうすぐ冬だなー。」



寒さに思わず手と手を摺り寄せて息を吐いてみるけど、突然下がった体温はなかなか戻ってはくれないらしい。


冬って、こういうのが苦手。


冬は美味しい食べ物も多いし、服も夏服より冬服の方が好き。だけどどれだけ厚着をしようと必ず寒いこの気温になれることはないんだろうな。



さっさと電車に乗ってしまおう。そう決めて走り出そうとしたときだった。



「お帰り。」

「え?」


突然現れた声の主に驚いた。だって今日は。


「出張じゃなかったですっけ?」

「寒いからやめた。」



肩をすくめてみせた春さんは、素早く私のところまで歩いてくると、そうすることが当たり前かのように自分の上着をかけてくれた。


「そんなことあるわけがないでしょう?どうしたんですか?」

「うーん。なんか我が社の社長に急用ができてさ。俺だけ行ってもよかったんだけど。」

「だけど?」




早めに来た夜の帳。その中でもなぜか春さんは輝いて見える。



「華が、寒がってると思って。」



その笑顔はとても暖かくて、春さんの体温が私の体を温める。


「さぼりはダメですけど、社長が急用なら仕方がありませんね。」



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