火炉~KARO~第一幕

鬼と人間の心 /和子と鬼

side 和子




目が覚めると、必ず火炉と目が合う。



「起きたのか。」


抑揚もなく言う火炉の台詞はいつものこと。まるでそれが当たり前かのように、必ず聞かれる言葉。


「いつも、思ってたんです。」

「ん?」


横たわる私を腕に抱く火炉は、少しだけ顔を動かした。穏やかな表情。なんだか落ち着く。


「こういう時は、おはようって言うんですよ。」


だからなのかもしれない。思わず言ってしまった言葉は、普通のことなのに。この不可思議で、異常な場所では酷く滑稽に聞こえてしまう。

黙り込む火炉は、何を思っているんだろうか。だけど……。


「私は、貴方と毎朝、挨拶がしたいんです。」



火炉は温もりをくれる。体を満たして、愛を囁いてくれる。それでも私は、寒かった。


この温かい人といるのに、どこか気持ち悪くて、どこかが痛んだ。


その正体は分かっている。私と火炉はきっと、愛し合っているのに、愛し合っていないから。



「愛しています。」


何を言っても、火炉は返事をくれない。途惑いすらなく、喜んでいる様子もなかった。


「愛して、います。」



涙が零れた。こんなにも胸が苦しいなんて、思わなかった。



「好き、なんです。」



溢れ出た心は、とめどなく流れ続けて、自分のことなのにそれを止める術がない。




0
  • しおりをはさむ
  • 4958
  • 10938
/ 492ページ
このページを編集する